実務経験がなくても、知識がなくても、応用情報技術者試験は半年で合格できる。特に、実務経験がない方の参考になればと、自分の勉強方法を残すことにする。
【応用情報技術者を受験した経緯】
実務経験は「一切」ない。IT系の会社に勤務しているわけではなく、一般的な文系サラリーマンだった。多少、学生時代にホームページ作成(CGI含む)をかじったことやPC高速化のためにレジストリをいじったことなどがあるため、PC操作には親しみやすさがあるものの、実務経験者とは比較にならない。何かしらIT系の資格が欲しくて、3年前にドットコムマスターのシングルスターを取得したが、ほとんどの知識を忘れてしまっていた。
しかし、ドットコムマスターよりも世間的に通用するIT系の資格を取得しておきたいと考えた時に、どう見ても簡単で、誰でも取得できるITパスポートは論外だった。基本情報技術者も候補とはなったものの、アルゴリズム等の実務経験者でなければ対応しにくい問題を避けられないため、いまいち受験する気にはならない。そんな中、「応用情報技術者なら、午後試験の問題を選択できるので、実務経験者でない者の取得が比較的容易」との説をネット上で見つけ、それもそうかと妙に納得。「基礎理論」や「アルゴリズム」等の、実務経験者でなければ理解が難しい分野には手を付けずに応用情報技術者を受験することにした。
【午前試験の勉強方法】
①基礎知識をざっと習得する。
IT系の基礎知識がなかったので、少しでも土台を作るために、名著と言われる「かんたん合格基本情報技術者教科書」を2回ほど通読した。ブックオフで108円で販売されていた古い版だったが、あくまでも土台作りのためなので気にする必要はなかった。完全な理解には遠かったが、応用情報技術者の午前試験に取り組む上で、適度な入口となったのは確かだ。なお、基本情報技術者試験の出題傾向と、応用情報試験の出題傾向は若干異なるので、「かんたん合格 基本情報技術者教科書」を完璧にする必要はない。ちなみに、ライトノベルの「なれる!SE」を読むと良いと言われるが、私は読まずに合格出来たし、少しでも過去問演習をした方が良いのではと思う。
並行して、無料で発行されている試験対策メルマガの問題を毎日読んだ。最初の頃は、分からない問題ばかりだったので、ネットで意味を調べたりしていた。過去問演習ができない日でも、頭を応用情報技術者試験に慣らすことができるので、欠かせなかった。
②問題演習を通じた理解
「応用情報・高度共通午前試験対策」を通読し、「基礎理論」以外何度も解いた。参考書ではあるが、過去問から抜き出された問題が数多く掲載されているので、出題される可能性がある問題を通じて理解をすることができ、効率が良い(チェック問題は煩わしくて解いていない。)。ただ、多数の合格者が使用している「応用情報技術者 合格教本」はカバーしている用語の範囲が広いので、収録されている問題は少ないが、良書であることは確かだ。共通午前試験対策には載っていない用語を調べたい時には、合格教本を時々立ち読みした。好みでどちらかを選べば良いと思う。
③過去問演習
「かんたん合格 応用情報技術者過去問題集」の過去問を5回分、繰り返し解いた。アルゴリズムや基礎理論の問題は、ほとんど最初から手をつけていない。ただし、逆ポーランド法やソートの方法等、解説を読んで理解できる問題は、モノにしていった。計算問題など、苦手な問題はなかなか正解できず、本当に何度も解いた。「3周で良い」なんていう意見もあるが、私からすれば「まさか!?」という印象を受ける。私は、10周ぐらい繰り返した気がする。それだけやれば、問題を見ただけで、解答が瞬時に選べるようになる。この「過去門演習」こそが、午前試験の肝だと思う。
④ダメ押しの「応用情報技術者試験ドットコム」
勉強後半になると、憶えきってしまった過去問を解く気にならず、「かんたん合格 応用情報技術者過去問題集」の著者である五十嵐先生の予想問題、「応用情報技術者ドットコム」の過去問道場及び予想問題を解いた。あくまでも、余裕が出てきたから解いたが、大して復習をしていないので、本番にどれだけ点数を積みませたかは、個人的には疑問だ。やはり、「かんたん合格 応用情報技術者過去問題集」を繰り返して、苦手分野以外を完璧にすることが重要だと思う。
⑤午前試験の感想
結果的に、午前試験は1時間ほど時間が余った上で退席し、得点は85点。全く分からずに手が出せない問題も出題されたが、大変は見たことがある問題であり、悔しい失点は皆無だった。批判を承知で偉そうなことを言うが、午前試験に落ちる人は明らかに「勉強不足」以外の何者でもない。過去問そのまま、若しくは過去問の焼き直しの問題が多数出題され、基礎理論の分野は必ずしも正確しなくても、全体で6割正解すれば通過できる試験なのに、午前試験を通過できないのは、最低限の暗記すら逃げているからだと思う。過去問を収録した問題集を繰り返せば、午前試験はなんとかなる。
【午後試験の勉強方法】
①問題の選択
午後試験で選択する問題は、次のようにした。
- 情報セキュリティ
- 経営戦略
- 情報システム開発(若しくはネットワーク)
- プロジェクトマネジメント
- サービスマネジメント
- システム監査
実務経験者が優位とされる出題範囲を避けた選択だ。「情報システム開発」か「ネットワーク」は、本番でどちらかを選択することにしていた。「ネットワーク」は、「情報セキュリティ」の出題範囲と重なる部分も多いので勉強していたが、最後まで苦手だった。「情報システム開発」は、事前の知識がなくても、その場で頭を悩ませれば回答できそうだったので、ハズレの問題(例えば、平成23年度特別試験のゴルフ場)でなければ、選択したいと考えていた(本番では「情報システム開発」を選択)。
②過去問演習
午前試験の過去問演習を3回ほど繰り返した頃から、名著「応用情報技術者午後問題の重点対策」に取り組み始め、選択する予定の問題のみを繰り返し解き、解説を読んで理解するように心がけた。1回解けば、問われているポイントも大体分かってしまっているが、それでも繰り返し解いて、解答のポイントを憶え込ませた。さらに、「かんたん合格 応用情報技術者過去問題集」に収録されていた午後試験の過去問も繰り返し解き、同様に解答のポイントを憶えた。重点対策の収録問題とだいぶ重複があるので、そこまで負担にはならない。
③ダメ押しのテクニック
本番では自分が知らない問題は必ず出題されるので、合理的に頭を働かせて、少しでも正解を積み増すことも重要だ。例えば、私が受験した平成26年秋期の午後試験では、問1で、次の様な問題文が出題された。「A」及び「B」を埋める選択肢を答えるものである(選択肢は省略)。つまり、IDSとIPSの役割の違いを問う問題である。
調査の結果、IDSは、X社の外部からの「A」ことができ、IPSは、X社の外部からの「B」ことができ(以下略)
この結果から、Zさんは次の二つの案を考えた。 案1:社内ネットワークのルータとFWの間にネットワーク型のIPSを導入する。 案2:セキュリティ強化の対象とするサーバにWAFを導入する。
私は、「IDS」と「IPS」という2種類のセキュリティ対策があることは知っていたが、どちらが「検知のみ」でどちらが「遮断まで可能」なのかは覚えていなかった。しかし、文脈からすると、IDSよりIPSの方が、セキュリティ対策として強力なことがわかる。特に問題文中に留保条件はないので、強力な方のセキュリティ対策を採用されるのが当たり前である。だからこそ、IDS及びIPSの役割を推測して回答することができた。分からない問題があっても、このように、少し頭を捻るだけで正解が得られる場合もある。
④午後試験の感想
結果的に、午後試験は30分ほど時間が余った上で退席し、得点は76点。苦手意識は直前まであったが、予想通り点数はあまり伸びなかった。ただ、自分のような実務未経験者でも得点できるのだから、午後試験に何度も落ちる人は、勉強のポイントを確実に間違えていると思う。午後試験の問題は毎回異なるので、全く同じ問題はない。確かに、時々奇問も出題されており、安定した得点は難しいかもしれない。それでも、問われるポイントは似通った問題が多い。問題発生→原因→対策→改善のどれかが問われているし、問われているポイントも、殊更新しくはない。午前試験以上の、大した知識も問われていない。特に、マネジメント系の問題は、その場で考えればいい問題だけだ。本文中から文章を抜き出せば、それだけで点数がもらえる問題も多い。そんな、「傾向」を重点対策や過去問で感じておき、本番に活かすしかない。問題を解いて、「あ~全然違うこと書いていた。運が悪かった。」で済ませていると、本番でも同じミスをする可能性が高い。
【まとめ】
IT系の仕事に就いて居なくても、半年間、毎日1~2時間の勉強をする時間があれば、合格できる。実務経験などいらない。基本情報技術者を取得していなくてもいい。必要な教材は、テキスト+メルマガ+過去問3年分+重点対策。捨てる範囲は勉強せず、後はひたすら同じ問題を逃さない対策をして、午後試験の感覚を養う。これで、応用情報技術者は手に入る。
もちろん、名前相応の知識が習得できているかは保証しない。応用情報技術者試験は、評価が高いながらも所詮その程度の試験だ。大層な試験だと気負わず、素直に傾向と対策(午前試験は暗記、午後試験はポイントを抑える)を行えばいい。
【実務経験者の方へ】
上記のとおり、応用情報技術者試験は、実務経験者でなくても、問題選択によって十分合格できる試験であることが理解いただけるかと思う。この勉強方法に加えて、実務経験を活かした問題選択ができたなら、さらに合格の可能性が高まるのは間違いない。また、日頃慣れ親しんだ分野は忘れて、文系人間が選択する分野だけに注力しても、十分合格できるということは、知っておいてほしい。