最近、「思えば長かったな」と思う。自分で資産運用を始めて現在の投資スタイルに落ち着くまで、そして、その選択が正しかったのだと思えるようになるまで、15年ほどかかったことになる。時々、話題になっている個別株やテーマ型投資信託を買って短期の値上がり益を追求したくなるけれども、全世界株式へのインデックス投資/積立投資こそが最善だと信じているし、それは大多数の一般人にも当てはまるものだと思っている。他の投資スタイルに浮気をしたくなる自分への自戒の念を込めて、そして、今から投資を始めようと考えている人や、同様にインデックス投資を続けているけれども浮気をしたくなった人への手助けとなることを願って、自分の投資遍歴とその教訓をまとめてみたい。
自分は恵まれていた。母親がせっせとお金を貯めてくれていたために、「投資をしてみようかな」と大学生の頃に思い立った際、それなりの元手があった。結果的に、そのお金を一時的に無駄にしてしまった。浅い考えで個別株を買い、小泉劇場のために大幅に値上がりしたことで自分の実力を勘違いしてさらに買い増した。オルタナティブファンドや不動産ファンドといった複雑かつ手数料の高い商品に手を出し、大幅に元本を棄損した。内藤忍「新・資産設計塾」を読んでインデックス投信の良さを少なからず理解していたのに、インデックスファンドには謙抑的にしか投資せず、BRICSや東欧諸国に投資するファンド、債券の割合が過度に大きいバランス型アクティブファンド、南アランド建て債券などを組み合わせて「分散投資」をしている気分になっていた。リーマンショックによる混乱により、最大で約300万円の含み損を抱えた。
以降、時間はかかったが、アベノミクス相場の恩恵を受けて価格が回復した商品を売却し、また、積立を続けていた当時のインデックスファンドの売却利益と相殺し、一からスタートさせた。発売当初は良心的な商品設計が画期的だったセゾン投信の「セゾン・バンガード・グローバルバランスファンド」には大変お世話になったと思う。オンラインによる取引の指示が基本的には出せず、申込書類のやり取りで設定した積立投資を継続することが中心となるセゾン投信との付き合いで、自分が投資していることすら忘れ、マーケット情報からも離れ、その後の株式市場のゆるやかな上昇による恩恵を享受することができた。市場において大幅な値下がりが起こった時にも、逆に毎月の積立金額を増額することで、さらに利益を拡大することができた。今となっては、もっともっと積立金額を大きくしておけばよかった、債券の割合が多いバランスファンドではなく全世界株式に集中投資しておけばよかったと悔やむばかりだ。そうして20代後半が過ぎていった。
さて、2021年3月20日時点の私の主な金融資産は上図のとおりだ。新型コロナウイルスの感染拡大を受けて2020年3月に発生した大幅な価格の下落とその後の回復の影響を受けて、最近の含み益の増加はとても速かった。評価額が1,000万円を超えると、たった1%の上昇でも相当の金額が動く。現在の評価額や含み益を示す数字は、自分の今後の生活への安心を与えてくれる。この安心には、多少の下落があっても元本を割り込むことはないだろうということや、上がり下がりがあるとは言え、今後も継続的に資産を増やしていけるだろうという見込みが含まれる。
2020年3月末時点で、大規模なスポット購入をしておくべきだった。3か月で80万円程度のスポット購入を行ったが、余剰資金があるにも関わらず絶好の買い場を逃がしてしまったことになる。もっとも、2番底があるかもしれないと多くの人が思っていたと考えられるので、仕方がないと諦めがつく。史上最高値を更新する米国市場など、現在の株価がバブルかもしれないという懸念があるため大きな投資には踏み切れないが(比較的大きな下落時にはスポット購入を行っている。)、次の暴落が来た際にはそれなりに思い切った投資の決断をしたい。セゾン投信の2本は既に積み立てをやめており、今年からはeMAXIS Slim全世界株式(オール・カントリー)への積立投資を基本としている。積立NISA枠では数年前からひふみプラスを選択していたが、初心に戻って今後はオール・カントリーに変更する。
以上が自分の投資遍歴だ。数多くの失敗をしてきたけれども、あと20年程度は働き続けることも考えると、今後も十分な投資ができるし、最終的に得ることができる利益は、自分にとって十分過ぎるものであろうと思う(インデックス投資ブログにおいてしばしば言及されるように、北斗の拳のような世界が訪れなければ。)。急成長する個別銘柄やテーマ型投信の値上がり益を享受できるのは大変魅力的だ。ただ、その選定は一般人には難しい、常に価格をチェックしてしまい心の平安が訪れない。白状しよう。自分も流行に乗ってeMAXIS Neo(自動運転など)を少額だけ買ってしまったことがある。1日に10%も上昇することもあれば、同じだけ下落することもある。リスクとリターンが見合っていないということを、痛感した。
まとめると、自信を持って以下のとおり言える(投資は自己責任で。)。
- 才能もない凡人は個別銘柄やテーマ型投信等で一攫千金を狙ってはいけない。個別銘柄等の頻繁な現在価格のチェックなどは時間の無駄、精神衛生上好ましくない。
- 全世界株式に投資するインデックス投信への積立投資をできるだけ早く開始し(理由はこちらに詳しい。)、余裕があれば少しでも積立額を増額する又はスポット購入する。あとは忘れる。
- 積立NISAやiDeCo、楽天証券の楽天カード決済など、基本的にメリットしかないサービスを今すぐ使い始める。20代の人々には強く言いたい。
- 下落相場の際に値段のチェックをしない。むしろ安く購入できていると喜んでおき、相場が回復してみてから覗いてみるぐらいがちょうど良い。
- 値下がりしていても、今後大きく値上がりするかもしれないのだから、今すぐに現金が必要でもないのに売却したりしない。事実、現代の相場は上がり続けている。
- 個別銘柄やテーマ型投信など、他の投資スタイルに浮気をしない。上手くいかなかった際にひどく後悔するのは自分。浮気したくなったときは、インデックス投信をスポット購入して気持ちを収める。