満足するまで走らせられなかった悔しい想いを胸に、もう一度レースに挑戦することにした。
「爆走兄弟レッツ&ゴー」というアニメが放映されていた頃、巷ではミニ四駆の大ブームが巻き起こっていた。ミニ四駆の一台くらい作ったことのない男子はほとんどいなかったし、近所にはミニ四駆の専用コースを常設しているおもちゃ屋が何軒かあったものだ。次第にミニ四駆ブームが廃れていって、専用コースを常設しているおもちゃ屋はおろか、ミニ四駆を置いている店自体がなくなっていったのは、とても静かな移り変わりだったけれど、あの頃の情景と比べれば劇的な変化に違いない。
自分もご多分に漏れず、ミニ四駆に熱中する小学生だった。初めて意識的にミニ四駆を買ったのが敵役沖田カイの「ビークスパイダー」だったから、「爆走兄弟レッツ&ゴー」が放送開始してしばらく経ってからだったと思う。その後、やはり主人公達の機体が欲しくなって、主人公星馬烈の「バンガードソニック」とか星馬豪の「ビクトリーマグナム」に乗り換えた記憶がある。小学生なりに頭をフルに使い、オプションパーツと共に組み上げた一台は、自慢の一台だった。にもかかわらず、自分にはあまりレースに出場した記憶がない。公式大会があっても、親が家族行事の予定を入れればそれに従うほかはなく、結局自慢の一台を片手にレースに出場したことはほとんどなかった。そして、いつの間にかミニ四駆への情熱も冷め、他の子供と同じように見向きもしなくなってしまったのだ。
ところが、それから20年近く経て、何気なく見つけたYouTubeの動画が、懐かしい気持ちに火をつけた。これは、当時放送されていた「爆走兄弟レッツ&ゴー」の後期オープニングテーマを、監修元の小学館が配信している公式動画だ。他にも、前期オープニングテーマや、続編である「爆走兄弟レッツ&ゴーMax」の動画も小学館が配信しており、一気に胸が熱くなった。幸い、小学生に比べれば自由に使えるお金はある。こうして、2ちゃんねる模型板やミニ四駆改造マニュアルwikiなどを1ヶ月間参照し、研究した上で自分なりに組み立ててみたのが冒頭で掲載したマシンだ。使用したパーツは下記でまとめたとおり。
【ボディ系】 |
ブレイジングマックス |
バンキッシュ クリヤースペシャル (ポリカボディ) |
【ローラー系】 |
ファーストトライパーツセット |
FRPマルチワイドステー |
ローラー用 9mm ボールベアリングセット |
ミニ四駆ビスセットA |
アンダースタビヘッドセット |
【駆動系】 |
60mm 中空ステンレスシャフト |
1.4mm中空軽量プロペラシャフト |
フッソコートギヤシャフト |
620 ボールベアリング2個セット |
ゴールドターミナル |
アトミックチューンモーター |
ニッケル水素電池 ネオチャンプ |
最近の改造テクニックとして、「井桁」「抵抗抜き」「脱脂」「提灯」などがあるが、いずれも手がかかるのでやっていない。そこまで極める時間やモチベーションはなかった。ただ、できるだけ組み立てた状態が硬くなるように、シャーシはバンキッシュクリヤースペシャルに付属している白色の強化VSシャーシを使用した。バンキッシュクリヤースペシャルには、その他にも大径ナローライトウェイトホイールに大径バレルタイヤが付属しているため、そのままでも使いやすいと判断したのも購入した理由。ボディはやはり正統派な主人公機を使いたく、「爆走兄弟レッツ&ゴーMAX」の主人公一文字豪樹の「ブレイジングマックス」を微妙にカットして使用している。
念願の復帰戦は、2012年6月に五反田TOCで開催された東京グランプリだった。当時少年だっただろう多くの大人の参加者と、影響を受けた子供の参加者で会場は大にぎわいであり、30周年を迎えて未だにミニ四駆の底力を思い知らされた。肝心の結果はというと、スタートダッシュでミスをして一瞬で失格である。しかも、他の出場者のマシンとは段違いに遅かった。世の中そう甘くはない。
結局、2走目まで待っている時間がなかったため、参加登録が間に合わなかった小学生に権利を譲って帰ってきたが、充実感はあった。仕事で忙しいとはいえ、収入もあって小学生に比べれば行動範囲が広がっている今なら、何かを始めるのに障害なんてないのかもしれない。ミニ四駆を継続するかはわからないが、なんでもチャレンジする余地はまだまだありそうだ。